羊子が趣味で書いた創作BL(ボーイズラブ)小説を掲載しています。小説には性描写が含まれますのでご注意ください。

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その他の番外|心を埋める(番外編)

Summer Dressing(11.栄)

 袋の中から出てきたのは、衣類と思しき布のかたまりだった。少しでこぼことした手触りの涼しげな布についた商品タグに、栄は目をこらす。 ――「しじら織り 甚平」。「……なんだこれ」「甚平という日本の衣類で、近年は夏の部屋着として人気だと聞きました」「いや、それは知ってる。そうじゃなく...
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Summer Dressing(10.栄)

 目を閉じて、集中して、何度も練習して体で覚えたリズムを繰り返す。それは学生時代や公務員試験の試験前に、暗記した単語や数式を復習する行為にも似ている。剣道の試合の前に、ゆっくりと呼吸を整える行為にも似ている。 空模様が怪しいと聞いたときには雨で余興が中止になることを期待したが、天...
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Summer Dressing(9.羽多野)

 不快感をあらわにする羽多野だが、ジェレミーは一向に気にする様子はない。「冗談ですよ」とつぶやいてポケットを探る。「私は栄さんともあなたとも仲良くしたいと思っているんです。そうだ、騒がせたお詫びにこれを差し上げます」 冗談、と言われてもとても信じる気にはなれない。もしも――絶対に...
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Summer Dressing(8.羽多野)

「とはいえ……」 腕時計にちらりと目をやって、羽多野はつぶやく。 金曜日、時刻は午後五時を回ったところ。気の早い同僚たちは昼食を終えた時点で週末モードに入っており、だらだらと午後を過ごして勤務時間終了すると同時に次々とオフィスを去っていく。 もちろん羽多野とて例外ではない。すでに...
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Summer Dressing(7.栄)

「……はあ」 Tシャツとスウェットを忌々しい気持ちで洗濯機に投げ込んでから、栄は大きなため息を吐いた。 大使館職員としての半ば義務である、と久保村に退路を断たれるかたちで、和太鼓チームのメンバーになって以来、週に二度ほどのペースで業務終了後に練習に参加している。 人様の前で演奏す...