きいろとあかと|心を埋める(番外編)

きいろとあかと|心を埋める(番外編)

第13話

過去のことだと言われればそれまでだ。当時は尚人の恋人は谷口栄だったのも間違いない。だが、いくら気にするなと尚人に言われたところで未生の中にある嫉妬は燃え上がるばかりだ。もちろんそれを理由に尚人を責めるようなつもりはないが、せめてあの男に許したことのすべてを未生にも許して欲しいし、...
きいろとあかと|心を埋める(番外編)

第12話

尚人のやや控えめなお誘いに、眠りと覚醒の半ばにいる未生は少しの間気づいていないようだった。 「尚人、今なんて?」  ようやく聞き返されたときには妙な間のせいで尚人は正気に戻り、恥ずかしさでいっぱいだった。 「なんでもない、です」  そうしらばっくれてはみるものの、赤らんだ耳元が嘘...
きいろとあかと|心を埋める(番外編)

第11話

「……それをもっと早く言って」  脱力したように床に崩れた未生は、死にそうな声で絞り出した。尚人は思わず聞き返す。 「言わなかったっけ?」 「言ってません。聞いてません」  きっぱりと即答されたので改めて振り返ると、確かに一度も明確な好意を言葉にした記憶はない。そのこと自体に尚人...
きいろとあかと|心を埋める(番外編)

第10話

「尚人、ちょっと待って」  完全に想定外の出来事を受け止めきれず手の中のカードをじっと見つめている尚人に向かって未生は焦ったように声を上げた。待てと言われても尚人はただ呆然としているだけなので、何を待てばいいのかわからない。 「何か誤解してるかもしれないけどさ、そのカードのことは...
きいろとあかと|心を埋める(番外編)

第9話

元気そうな未生の姿を目にして尚人は拍子抜けした……と同時に胸の奥にもやもやと面白くない気持ちが芽生えるのを感じる。それをぐっと飲みこむのは、理不尽な感情だと自覚しているからだ。 「ごめん……もしかして、寝てた?」  本当は電話にも出ずメッセンジャーアプリの返信もしなかったことを責...