僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(19)

 城と呼ばれるものには見たことも、入ったこともある。でもそれらは正確には「元・城」と呼ぶのが相応しい代物、つまり今では遺構や博物館として使われていて生活の気配はなかった。「本当に、城で暮らしてる人っているんだ……」 思わず感嘆のため息をつく僕に、ヒューゴは笑う。「住み心地なら新し...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(18)

 僕にとってはじめての長距離列車。それは、最初の一時間ほどは新鮮で楽しく――その後はとても疲れるものだった。最初はもの珍しく思えた田園風景にもやがて飽きるし、何時間も座った姿勢のままでいるのでだんだん体がこわばってくる。「あと何時間で着く?」と質問を何度繰り返したときだっただろう...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(17)

「そういうわけで、ヒューゴの家に行くことになったから、その週はここに手伝いに来ることができないんだ」「素晴らしいことではないですか!」 おじいさんの家のリビングルームで僕が告げると、ベネットさんがすかさず身を乗り出す。「将来のことを思えばソーントン家との親交を深めるのは素晴らしい...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(16)

 本に夢中になるうちに、気づけば昼をずいぶん過ぎていた。 どれだけよどんだ気分でいても、しっかりと空腹はやってくるので成長期の体とは現金なものだ。 館内での飲食は禁止されているので、座席は確保したままで図書館の中庭に出た。短い夏の日差しを一ミリたりとも逃すまいと、たくさんの人が芝...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(15)

 何気なく手に取った本だったけれど、読みはじめると夢中になって、時間はあっという間に経った。 ヒューゴの言葉を聞くまでは考えもしなかった、人の形をして人のように振る舞う機械を性的にまなざす人間の存在。それによって発生した問題への対処としての、性的な器官の分離。どうやら僕が思ってい...