
6. 第1章|1946年・ウィーン
街に出ると、最初にウィーンにやって来た日のことを思い出す。列車の窓からシェーンブルン宮殿が見えたときに、ようやく自分は本当にウィーンにやってきたのだと実感した。
越境するための正規の書類を持っていない自分たちが本当に国境を越えられるのかが不安で、列車に乗って以降うとうとすることすらできなかった。しかし、ニコがいくらかの現金とたばこを渡すと国境警備のソ連兵は何も言わず二人を見逃した。ほっとして緊張の糸が切れたレオはそこから眠り込んでしまい、ニコに揺り起こされるとそこはもうウィーンだった。