心を埋める 63. 栄
「栄?」黙ったままの栄に、尚人が落ち着かない視線を向けてくる。笠井未生、という名前を聞いてすぐに浮かんだのはパーティ会場で挨拶を交わした若者の姿だった。続いてあのときの未生の奇妙な態度を思い出す。最初にパーティ会場の場所を訊ねてきたときにはそんな素振りすら見せなかったのに、名刺を渡した途端に栄に見覚えがあるのだと言い出した。いま思えば不自然この上ない行為の意味を、栄はようやく理解した。
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