心を埋める

63. 栄

「栄?」黙ったままの栄に、尚人が落ち着かない視線を向けてくる。笠井未生、という名前を聞いてすぐに浮かんだのはパーティ会場で挨拶を交わした若者の姿だった。続いてあのときの未生の奇妙な態度を思い出す。最初にパーティ会場の場所を訊ねてきたときにはそんな素振りすら見せなかったのに、名刺を渡した途端に栄に見覚えがあるのだと言い出した。いま思えば不自然この上ない行為の意味を、栄はようやく理解した。
お知らせ

拍手&コメント御礼

コメント、感想もありがたく読んでいます。修羅場メロドラマ好物な方が意外と多くて、お仲間の存在に喜んでいます。作品の展開についてのコメントも頷きながら読ませていただきました。「尚人=ヒロイン脳」はまさしくその通りですよね。。。三角関係や浮気ネタはエゴ丸出しになりやすいですし、誰もが...
心を埋める

62. 尚人

窓から差し込む光に目を覚ます。真横に人の姿を認め一瞬未生かと思うが、それは一年以上ぶりに同じベッドで眠る恋人だった。どうやらほんの数ヶ月のあいだに尚人の中の「当たり前」はすっかり捻れてしまっていたようだ。バスルームでひどく抱かれた後で、栄の寝室でもう一度。さすがに体の反応も鈍くなり一方的な行為には苦痛しかなかった。最後の方は記憶すらおぼろげだ。
お知らせ

拍手&コメント御礼

コメントで栄への複雑な(?)お気持ち、ありがとうございました。彼は完璧不憫キャラですが、プライドと自己評価が高すぎてそれに気づいていないかと思います。
心を埋める

61. 尚人

バスルームの床に裸で四つん這いになり、腰を高く掲げる屈辱的な格好をさせられたまま尚人は目を閉じきつく唇を噛んで耐えていた。「本当に、前はセックスなんか全然好きじゃないって感じだったのにな、ナオ」「あ……っ」