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その他の番外|心を埋める(番外編)

Summer Dressing(7.栄)

「……はあ」  Tシャツとスウェットを忌々しい気持ちで洗濯機に投げ込んでから、栄は大きなため息を吐いた。  大使館職員としての半ば義務である、と久保村に退路を断たれるかたちで、和太鼓チームのメンバーになって以来、週に二度ほどのペースで業務終了後に練習に参加している。  人様の前で...
お知らせ

拍手&コメント御礼

本当は8月中に書いてしまいたかった「Summer Dressing」ですが、思うようにはいかずすっかり9月。せめて暑いうちに完結を、と旅先でにてタブレットやスマホでちまちま進めています。 わちゃわちゃとまとまりない話ですが読んでくださっている方には深い感謝を! やっぱり羽多野さん...
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Summer Dressing(6.トーマス)

アリスの放言にトーマスはギョッとした。一瞬、愛おしい恋人の口を手でふさぐべきかと頭をよぎったくらいだ。天真爛漫なのは彼女の愛すべき個性だが、日本人相手だといささか遠慮がなさすぎるのは困りものだ。 「アリス、そういうことは言わないで。これはソープオペラじゃなくて現実世界の話だし、僕...
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Summer Dressing(5.羽多野)

羽多野は約束の時間の十五分前にはタイ料理店に到着して、友人カップルの到着を待ちかまえた。  メニューを眺めながら、前の晩、げっそりと疲れた顔で帰宅した栄の姿を思い起こす。  仕事に追い詰められているときとは違うどんよりとした表情。朝までの羽多野なら、その裏に隠されたものを探ろうと...
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Summer Dressing(4.羽多野)

羽多野はここのところ、嫌な予感を募らせている。栄の様子がおかしいのはいつものことだが、それが隠しごとをされている気配とくれば、放っておくわけにはいかない。  正面から確かめるのは悪手なので、朝の慌ただしさに紛れて軽く探りを入れてみる。 「そういえば、同僚からうまいタイ料理屋を教え...