醒めるなら、それは夢(番外編)

醒めるなら、それは夢(番外編)

眠る場所|1960年・ハンブルク

晴れた午後の公園を、ニコは車椅子を押しながら歩いていた。車椅子に座る老人は、左脚の欠落が目立たないよう膝にかけたブランケットで足先まで覆ってやっている。本人はあまり気にしていないようにも見えるが、彼が戦争で負った怪我とどのように向き合えばいいのかニコの中ではまだ答えが出ないままでいる。
醒めるなら、それは夢(番外編)

ハンブルク帰郷編(4)|1956年・西ベルリン

れはあるものの、それ以上にユリウスの心は満足感でいっぱいだった。「コーヒーを淹れるから、君はゆっくりしてて」部屋に入ると、そう言ってニコはすぐにキッチンに入った。夕食は帰る途中に空港で軽く済ませてきた。いや、正確にはあまりにも胸がいっぱいで注文した料理もほとんど喉を通らなかった。本当はずっと父親のことを気にしていた。他人の家族を奪うことに手を貸した自分に親の心配をする資格などない――そんな言葉でごまかして、実のところはただ怖くて恥ずかしかっただけだ。
醒めるなら、それは夢(番外編)

ハンブルク帰郷編(3)|1956年・西ベルリン/ハンブルク

「聞いてない」次の休日の朝、ニコの真意を知らされたユリウスは大いに驚き、それから不機嫌になった。一緒に出かけたいと思わせぶりに言われて、平静を装いながらもとても楽しみにしていたのだ。同じ部屋で暮らしはじめてからも日々の生活に追われ、ゆっくり二人で外出することなどなかった。休日だってニコはほとんど家か図書館で勉強していたし、ユリウスもニコのやりたいことを一番に優先したかったから特に不満があったわけではない。だが、ようやくデートのようなことができるとなれば、それはそれで心踊った。
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ハンブルク帰郷編(2)|1956年・西ベルリン

朝起きるとシャワーを済ませ、二人分のコーヒーを淹れる。家事全般を何かとユリウスに頼りがちな毎日だが、これだけはニコにとって譲れない毎朝の日課だ。この部屋に連れてきて最初にコーヒーを淹れたとき、ユリウスは妙に感慨深そうにカップに口をつけた。その様子を不思議に思って理由を訊ねると、「ハンスが、ニコの淹れたコーヒーが美味いと言っていたから、ずっとどんな味なのか気になっていた」のだと言う。もちろんその言葉に一切悪意はないのだが、ニコはかつてユリウスの裁判について知らせるためにわざわざウィーンからやってきたハンスにひどい態度をとってしまったことを思い出して、いたたまれない気持ちになった。
醒めるなら、それは夢(番外編)

ハンブルク帰郷編(1)|1956年・西ベルリン

夜九時半。その日最後の講義が終わり、バッグに荷物を詰め込んでいると若い友人が声をかけてきた。「ニコ、帰りにみんなでビールでも飲みに行こうかって話してるんだけど、一緒にどう?」ニコは昨年の秋に念願の大学入学を果たした。