その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い。だけではなくて(6)

「ありがとう、しっかりした資料を作ってくれたおかげで今日のレクは大成功だったよ。急な頼みで迷惑を掛けたね」 そりゃそうだろう。俺はその「急な頼み」のために貴重な土日を潰し、さらには追加注文に応じるために月曜の夕食の予定もキャンセルしたんだからな。 ――という本音を口に出すことは当...
その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い。だけではなくて(5)

次の朝は、《《普段どおりの火曜の朝》》だった。 正確には、羽多野は細心の注意を払って普段どおりの朝を装った。少なくとも栄には一切の違和感を抱かせなかったはずだ。 時間をずらして家を出ろとにらみつけてくる栄をいなしながら、一緒に玄関を出て駅へ向かう。一駅だけは同じ車両に乗り、栄だけ...
その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い。だけではなくて(4)

そして、プリン作成開始から約二時間後。嵐の後のように散らかったキッチンに、羽多野は呆然とたたずんでいた。 オーブンから取り出したばかりのプリン――になるはずだったものは、ボコボコと穴だらけの表面からして思い描いた姿とはまったくの別物。泡立て器なしでは攪拌が十分でなかったのか、もし...
その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い。だけではなくて(3)

「プリンって……、作れるのか?」 反射的に羽多野の口を突いたのは、自分でもびっくりするほど間抜けな質問だった。 小巻にとっても博識かつ自信家である元上司の口からこのような言葉が出てくるのはよっぽど意外だったに違いない。アイラインで囲った目を一度ぎょっと見開いて――おそらく内心で「...
その指は甘い、だけではなくて|心を埋める(番外編)

その指は甘い。だけではなくて(2)

週が明けて月曜日、夕方になって羽多野のスマートフォンに栄から連絡が入った。 ――急ぎの仕事が入って遅くなります。すいませんが夕食はキャンセルで。ひとりで行ってくれても構いません。「どうしたんですか、デートのキャンセルですか?」「……なんだよ、藪から棒に」 女の勘とはおそろしいもの...