サクラ踊る踊る

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第22話

「冷蔵庫にトマト煮みたいなやつ入れてあるから。米は炊いて冷凍してあるからチンすればいいし、パンの方が良ければバゲット買ってあるから」 圭一は実家の冷蔵庫をバタンと閉めるとリビングの父親に声をかけた。昨晩アルバイトが終わった後で実家に戻り、渋谷に教えてもらった鯖のラタトゥイユや冷凍用のご飯を準備した。
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第21話

生温かくて柔らかいものが唇に押し付けられ、圭一はぼんやりと「ああ、これは和志の唇だ」と考えた。幼馴染の、しかも男とのキスなど一度だって想像したこともなかったが、いざやってみれば女の子とのキスと大差はない。目を閉じてしまえば男か女かもわからないくらいに。 ――いや、違う。
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第20話

ほっと胸を撫で下ろした圭一だが、しかしだんだんとそんな自分への疑問が頭をもたげてくる。 和志とほのかが付き合っているかどうか、果たしてそんなことが問題の本質だっただろうか。そもそも圭一は何にショックを受けて、何に怒っていたのか。そこでもうひとつ大切なポイントが残っていたことを思い出して、圭一は再び和志に詰め寄ることにする。怒りはさっきの半分程度までに目減りしているが、だからといって問題をうやむやのままにするわけにはいかない。
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第19話

「マジかよ……」 「ごめん、圭ちゃん。黙っていたことは謝る。でもこれには理由があって」 ベッドの縁に座ってうなだれる圭一に、和志は食い気味に言い訳を口にしようとした。だが、そこから先を聞くことが怖い。そして怖さ以上に和志の裏切りへの怒りが腹の奥からとめどなく湧いてくる。
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第18話

一体何が起こっているのかわからない。あまりのショックに頭がクラクラし、圭一が思わずよろめいたところで驚いた渋谷が声を上げ駆け寄ってくる。 「おいどうした、貧血か?」 「いや、大丈夫です。何でもありません」