醒めるなら、それは夢

13. 第1章|1946年・ウィーン

レオとニコは思わず押し黙った。男の告白はあまりに唐突で、そもそも見知らぬ他人に明かしていいようなこととは思えない。一方で、普通はとても口にしないようなことをこうして口にしてしまうこと自体が彼の動揺の大きさを物語ってもいた。 「声が大きいですよ」 レオが警告すると、男ははっと口をつぐんだ。ラインハルト少年はぐっと唇を噛んで下を向き、子どもながらに必死で屈辱に耐えているような素振りを見せた。
醒めるなら、それは夢

12. 第1章|1946年・ウィーン

意外にも、というわけでもないがニコはシュルツ夫人の申し出をあっさりと受け入れた。おおかた彼女はひとりで過ごした昨年のクリスマスがどれだけ寂しかったかについてニコに何度も話し聞かせていたのだろう。とはいえ誘いを受けたのは義理立てのためだけというわけでもないのか、クリスマスか、とつぶやくニコはどこか嬉しそうでもある。
醒めるなら、それは夢

11. 第1章|1946年・ウィーン

可能性その一、――ニコは本当にあの晩の出来事を覚えていない。その場合、嘘をついているのはレオ。ニコが覚えていないのをいいことに自分の浅ましい行為をなかったことにしようとしている。 可能性その二、――ニコは本当はあの晩の出来事を覚えている。その場合、嘘つきは二人。ニコは、覚えているにも関わらず忘れたふりであの晩の出来事をなかったことにしようとしている。そして、レオもその嘘に便乗しているという意味においては等しく嘘つきである。
醒めるなら、それは夢

10. 第1章|1946年・ウィーン

  固く張り詰めた勃起をニコの薄い臀部に擦り付けると、そこから腰全体にじんわりとたまらない快感が広がっていく。最初は遠慮がちに、やがて強く、レオは快楽を追う行為に夢中になった。 唇と手での愛撫に、目こそ覚まさないもののニコがもぞもぞと体を動かしはじめる。気づかれてはいけない。今すぐ手を離してベッドから出るべきだ。冷静な自分が警告を突きつけてくる。しかし、まるで長い禁欲生活の反動であるかのように一度火が着いてしまった欲望は御し難い。
醒めるなら、それは夢

9. 第1章|1946年・ウィーン

いくら痩せているとはいえ大の男二人で眠るにはベッドが小さすぎ、仰向けになることも距離を取ることも難しい。壁に顔を向けるように横向きにしたニコの体に、レオが後ろから寄り添う体勢になる。 昼間のことをまだ引きずっているであろうニコが目を覚ましたら怒るだろうか。勝手に着替えさせて、勝手に同じ布団に潜り込んでしまった。不安要素はいろいろとあるはずなのになぜだか心は安らいでいた。緊急時だからしかたなかった、というエクスキューズが準備されていることはもちろんだが、何よりレオは心のどこかでこの状況を喜んでいる
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