雨を待つ国 25. 王殺し 〈王殺し〉は北の塔から少し離れた場所に見つけた茂みの中に潜りこみ長いこと震えていた。自分のやってしまったことがただ怖いと、それ以外なにも考えられなかった。どのくらい経っただろう、気づけば周囲は暗闇に覆われ、やがてその中にぽつぽつと灯りが浮かび上がりはじめた。「おい、いたか?」「こっちには見当たらない」 2017.10.28 雨を待つ国
雨を待つ国 24. 王殺し 目を覚ました〈王殺し〉は、一瞬自分がどこにいるのかわからず混乱した。石の床に腹をつけて、いつのまにか眠っていたようだ。そういえば、粗悪な酒を飲んで眠った翌朝にもこんな気分になったことがあったかもしれない。頭は重く少しばかり痛むが、一方で体の奥がすっきりとしたような感覚もあった。顔を上げると、そこには〈少年王〉がいた。しかしその姿は奇妙としかいいようがない。石の台座の上で上半身だけを起こしているが、その体には何もまとっていないどころか白い肌の至るところにひっかき傷や咬み傷といった、まだ新しく生々しい跡がたくさん残っていた。 2017.10.26 雨を待つ国