お知らせ

「悩める童貞と魔法のカップホール」を全話掲載しました

作品置き場を別途作ることにしました。しばらくは「ムーンライトノベルズ」に掲載済のものをこちらに掲載していきます。
雨を待つ国

23.  少年王

祈りの時間の終わりはいつも同じだ。頃合いを見計らって筆頭賢者が北の塔に戻ってくる。だが〈少年王〉が気づくのはいつも彼が部屋の中に入ってきてからだ。なぜなら彼はいつも石の台座の上で揺り起こされるまで意識を失ったままでいるからだ。目を覚ました〈少年王〉は、自分の身に起こっていたことが夢だったのか現実だったのかわからず不安に襲われる。あんなにひどく〈あれ〉に蹂躙されたはずの体はきれいになっていて、身体中を湿ったものに這い回られた痕跡も、何度も搾り取られた精液の飛び散った形跡もどこにもない。ただ、体の奥にはうっすらと熱が残っていて筆頭賢者の枯れて老いた顔を見るのがどうにも気まずく感じられた。
雨を待つ国

22.  少年王

これまでになく沈んだ気持ちで〈少年王〉は祈りの時間を迎えていた。今日、王の挨拶の最中に中庭に集った人々から罵声が飛んだ。彼がバルコニーに立つようになって以来初めてのことだった。歓声をかき消すように発せられた「こんなに雨が降らないなんて、悪魔でも憑いているんじゃないのか」という声は大人の男のものだった。王を讃える声や恵みを求める声をあげていた周囲の人々は、乱暴ではあるものの切実な罵声が飛ぶと同時に黙り、場はしんと静まりかえった。そして〈少年王〉はその静けさを、罵声への賛同だと理解した。
雨を待つ国

21.  王殺し

やがて溶けた体が元どおりに戻る感覚があり、気づけば〈王殺し〉は北の塔の中にいた。一瞬、入り込む場所を間違えたのかと思った。というのも、そこは薄暗く冷たくじめじめとした狭い場所で、王の祈りのための神聖な場所というよりはむしろ牢獄のように見えたからだ。しかし、先ほど塔の外側で聞いた宰相と筆頭賢者の怪しげな会話を思い出すと、彼らが〈少年王〉をこんなひどい場所に押し込めてしまうのも不思議はないような気がしてくる。
雨を待つ国

20.  王殺し

〈少年王〉は眉根を寄せて、言葉を続ける。「毎日、午後に北の塔の地下室でお祈りをするんだ。国や人々のために一生懸命祈っているつもりなんだけど、最近どうしても……。もしかしたら雨が降らないのも、僕がちゃんと祈れていないからなのかもしれない」あいまいな言葉のみで〈少年王〉は、それ以上話を続けようとはしなかった。疲れたように黙りこんで、やがて前の晩と同じように〈王殺し〉の体にもたれて眠ってしまった。