僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛けと傷痕(5)

お母さんと眠っているときと似ているけれど、どこか違っている。でも、あんなに泣いて、あんなに怖くて、あんなに不安だったはずなのに僕はサーシャの腕の中で気づけばぐっすりと眠っていた。  目を覚ましたのは、周囲がすっかり明るくなってから。ゆっくりを目を開けるまではそこが僕のベッドだと疑...
僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛けと傷痕(4)

何が起きたのかは、覚えていない。  ふわっと体が浮いたような気がしたけれどそれはほんの一瞬のことで、気づいたら僕はサーシャの腕の中にいた。何かにぶつかるような衝撃はあった。でも僕の体はどこも痛くない。だからきっと、大丈夫だったんだと思った。  恐怖からぎゅっと閉じていた目を、そっ...
僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛けと傷痕(3)

サーシャとけんかになるのはそんなに珍しいことじゃない。というか、休みの日に一日一緒にいれば、大体一度はけんかをする。とはいえ僕が一方的にサーシャの言うことや態度に腹を立てるだけのこれをけんかと呼ぶのかはよくわからないけれど。 「サーシャのばか、わからずや」  部屋でひとり、つぶや...
僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛けと傷痕(2)

「ご機嫌ですね、アキ」  翌週の土曜日、朝ごはんを食べている僕をじっと眺めてからサーシャは言った。  僕たちはダイニングキッチンのテーブルに向かい合って、サーシャは砂糖もミルクも入れないコーヒーを飲んでいる。僕の前にはトーストとチーズオムレツ。トーストは薄くてカリカリで、半分だけ...
僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛けと傷痕(1)

歌が終わり、みんながパチパチと拍手をする。 「おめでとう、アキくん」  ナディア先生がそう言って、僕に紙の花でできた首飾りをかけてくれた。くすぐったいような、恥ずかしいような、誇らしいような、なんともいえない気持ちで僕は思わず目を伏せてしまう。 「アキくんも、六歳ね。来年はもう小...