醒めるなら、それは夢(番外編) ハンブルク帰郷編(2)|1956年・西ベルリン
朝起きるとシャワーを済ませ、二人分のコーヒーを淹れる。家事全般を何かとユリウスに頼りがちな毎日だが、これだけはニコにとって譲れない毎朝の日課だ。この部屋に連れてきて最初にコーヒーを淹れたとき、ユリウスは妙に感慨深そうにカップに口をつけた。その様子を不思議に思って理由を訊ねると、「ハンスが、ニコの淹れたコーヒーが美味いと言っていたから、ずっとどんな味なのか気になっていた」のだと言う。もちろんその言葉に一切悪意はないのだが、ニコはかつてユリウスの裁判について知らせるためにわざわざウィーンからやってきたハンスにひどい態度をとってしまったことを思い出して、いたたまれない気持ちになった。
