その他の番外|心を埋める(番外編)

大きいのがお好き?(3:尚人)

 半ば押しつけられるかたちで生徒と「コメダでノーマルサイズのシロノワールとかき氷を食べる」という約束を交わし、尚人がまず考えたのはひとりで店に行くことだった。 だが、甘い物は別腹と公言してはばからない女子高生ですら持て余すようなスイーツを、しかも二品。とても自分の手に負える気はし...
その他の番外|心を埋める(番外編)

大きいのがお好き?(2:未生)

「未生くんは、コメダ珈琲って行ったことある?」 尚人の質問はさりげなさを装ってはいたが、その奥に潜む複雑な心情を未生は見逃さなかった。 たかがコーヒーショップの話題。だが、一週間ぶりの逢瀬だというのに、はるばるやって来た未生にまず切り出すのが「コメダ」とは、あまりに唐突すぎる。尚...
その他の番外|心を埋める(番外編)

大きいのがお好き?(1:尚人)

 さっきから問題集とノートの間で視線をさまよわせながら、シャープペンシルをくるくると回していた少女が顔を上げる。 問題が難しすぎたかな? 彼女が気負うことなく質問できるよう、努めて親しみやすい笑顔を浮かべる相良尚人に、投げかけられた質問は想定外のものだった。「ねえ相良先生、コメダ...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(19)

 城と呼ばれるものには見たことも、入ったこともある。でもそれらは正確には「元・城」と呼ぶのが相応しい代物、つまり今では遺構や博物館として使われていて生活の気配はなかった。「本当に、城で暮らしてる人っているんだ……」 思わず感嘆のため息をつく僕に、ヒューゴは笑う。「住み心地なら新し...
僕と機械仕掛けとゴースト

僕と機械仕掛けとゴースト(18)

 僕にとってはじめての長距離列車。それは、最初の一時間ほどは新鮮で楽しく――その後はとても疲れるものだった。最初はもの珍しく思えた田園風景にもやがて飽きるし、何時間も座った姿勢のままでいるのでだんだん体がこわばってくる。「あと何時間で着く?」と質問を何度繰り返したときだっただろう...