その他の番外|心を埋める(番外編)

Summer Dressing(12.おまけ)

――退屈だ。 予定より早く着きすぎたから入ったカフェで、つい十分ほど前にもチェックしたばかりのマッチングアプリの画面を開いてジェレミーはため息をついた。 すっかり見飽きたアイコンは自分の写真。写りは良い。とはいっても実物以上に魅力的に撮れているという意味ではない。 微かなピンぼけ...
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Summer Dressing(11.栄)

袋の中から出てきたのは、衣類と思しき布のかたまりだった。少しでこぼことした手触りの涼しげな布についた商品タグに、栄は目をこらす。 ――「しじら織り 甚平」。「……なんだこれ」「甚平という日本の衣類で、近年は夏の部屋着として人気だと聞きました」「いや、それは知ってる。そうじゃなくて...
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Summer Dressing(10.栄)

目を閉じて、集中して、何度も練習して体で覚えたリズムを繰り返す。それは学生時代や公務員試験の試験前に、暗記した単語や数式を復習する行為にも似ている。剣道の試合の前に、ゆっくりと呼吸を整える行為にも似ている。 空模様が怪しいと聞いたときには雨で余興が中止になることを期待したが、天気...
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Summer Dressing(9.羽多野)

不快感をあらわにする羽多野だが、ジェレミーは一向に気にする様子はない。「冗談ですよ」とつぶやいてポケットを探る。「私は栄さんともあなたとも仲良くしたいと思っているんです。そうだ、騒がせたお詫びにこれを差し上げます」 冗談、と言われてもとても信じる気にはなれない。もしも――絶対にあ...
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Summer Dressing(8.羽多野)

「とはいえ……」 腕時計にちらりと目をやって、羽多野はつぶやく。 金曜日、時刻は午後五時を回ったところ。気の早い同僚たちは昼食を終えた時点で週末モードに入っており、だらだらと午後を過ごして勤務時間終了すると同時に次々とオフィスを去っていく。 もちろん羽多野とて例外ではない。すでに...