王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第12話

「本当に羽多野さんって、最っ低ですね……」 ベッドに倒れ込んだ栄が疲れ果てたような顔でつぶやくのを見て羽多野は笑う。「そこは『すごく良かった』って言うところじゃないのか?」 枕が飛んでくるのは想定済みだったから軽々と両手で受け止めた。ヒーティングの効いた部屋で、しかも風呂上りだか...
王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第11話

 栄は何も言わなかった。というよりはきっと、どう返事をすれば良いかわからなかったのだろう。そもそも羽多野自身も答えを求めて問いかけたわけではない。 覆いかぶさったままの体を揺らし奥まで進む。前回は余裕なくひたすらに貪るだけだったが、今日はゆっくりとこの体を味わいたい気分だ。すぐに...
王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第10話

 核心を避けるかたちで敏感な場所ばかりを撫でられて、おそらくは無意識の仕草で栄が羽多野の腕に爪を立てる。高められたままで放置されてそろそろ苦しさを感じているのかもしれない。「一回、出しておく?」「それで終わってくれますか?」 挑発的な言葉に羽多野は首を振る。もちろんそんな気はさら...
王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第9話

 逃げようとしてバランスを崩した体は再びベッドに崩れ落ちる。かわいそうではあるが羽多野にとっては都合がいい。「この、嘘つき……」 罵りの言葉は無視して淡い褐色の乳輪を尖らせた舌でなぞると栄は面白いように震える。快楽を逃がそうと背を浮かせばそのまま腰を突き出す体勢になるから結局は羽...
王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第8話

「だからって、すぐにこんなところを」 腕の中の栄は明らかに動揺して逃げを打つように体をよじるが、結果的に自らそこを羽多野の指に擦り付けるような動きになる。「なんだよ、まんざらでもなさそうじゃないか」「違います!」 鼻先が触れ合いそうな距離で顔を赤くしてわめく姿は、仕立ての良い細身...