尺には尺を?|心を埋める(番外編)

尺には尺を?|心を埋める(番外編)

おまけ(2)

あり得ない。 乗り込んだタクシーの中、栄は何度も心の中で繰り返す。 この国では日本と比べてスリや置き引きといった軽犯罪が多いことは知っている。その上で普段から自衛してきたはずだった。 貴重品をポケットなどの無防備な場所に入れない、持ち物から目を離さない、路上でスマートフォンを見る...
尺には尺を?|心を埋める(番外編)

おまけ(1)

「はい、これ」 羽多野がそう言って鉄道の切符を差し出してきたのは、栄がとことん酒を飲まされ、わけがわからないまま下半身を剃毛されてしまった「忌まわしい週末」が明けてすぐのことだった。 クリーム色のカードの上下にはオレンジ色の太いライン、左上にはQRコード。日本のものよりはずいぶん...
尺には尺を?|心を埋める(番外編)

第9話

ずっと暗い色の布で目を覆われていたので、まずは光を取り戻した眩しさに目がくらんだ。羽多野と絡み合って激しく動いているうちに緩んだネクタイがずれて視界が開けたのだ――そう気づいた栄の目に入ったのは信じがたい光景だった。「嘘っ……!」 ベッドの端ぎりぎりに座っている羽多野と、その膝の...
尺には尺を?|心を埋める(番外編)

第8話

羽多野がどんな顔をして、何を見ているのかわからない。どこに手を伸ばし、どこに触れようとしているのかも一切知ることのできない異常な状況はなぜか栄を昂らせる。「……っ」 ひんやりとした手が、緊張でこわばった腹を優しく撫でる。後ろから抱きすくめ、羽多野は次にどう動くつもりなのか。その手...
尺には尺を?|心を埋める(番外編)

第7話

羽多野は栄の唇を柔らかく噛みながら、後ろへ回した手でうなじを撫でる。はっきり認めたことはないが、そこは栄にとって弱い場所で、特に襟足を指の腹でくすぐられると体から力が抜けそうになる。 だが――こんなことでごまかされるわけにはいかない。今回のいたずらは、ちょっと首筋や胸元にキスマー...