サクラ踊る踊る

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第7話

一見したところそのメールは他のものと比べて多少ミーハー成分が抑えめではあるものの、内容に大差はなかった。芸能界の人間関係に悩んでいるというほのかを真剣に心配する様子で「自分で相談に乗ることができるならば、なんでも話してほしい」といった内容が落ち着いた文面にしたためられている。
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第6話

やがて圭一はむくりと起き上がると、ゴミの山に投げ込んだスマートフォンを拾いに行った。面白くない。何もかも面白くない。そして、やり場のないイライラをぶつける先として思い浮かんだのが、他の誰でもないさっきのメールの送信主だった。どうせ、ろくでもないアイドルオタクだ。相手だってまさか本気で十六歳のアイドルと友達になれるなどとは思っていないはずだ。ちょっとからかってやるくらいなら罪にもならないだろう。それはほんのいたずら心だった。
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第5話

そもそも圭一は和志に構われるのが嫌で実家を出たわけで、その元凶が食べ物だけ置いてさっさと部屋を出て行ってくれるのは願ったり叶ったり――であるはずだ。ひとりになった部屋で、圭一は早速差し入れの料理を皿に取り分けた。久しぶりに食べる和志の祖母の手料理。ほぐした鮭と薄切りにしたキュウリを混ぜ込んで、上にたっぷりの錦糸卵と白ごま、そしていくらをトッピングしたちらし寿司は相変わらず絶品だ。甘酸っぱい酢飯にごまの香ばしさとキュウリの歯ごたえがたまらない。揚げてとろとろになったナスにひたひたの出汁を含ませた揚げだしも美味しくて、これならばナスの二、三本分だってひとりで平らげてしまえそうだ。
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第4話

「うーん……」テーブルに置いた真新しいスマホとマニュアルを見つめて圭一は頭を抱えていた。高岡のマンションを後にしたときは重苦しい空気から逃げられた解放感に安堵したものの、今となっては持ち帰ってきたこれらがひたすら重い。後で断ればいいなどと甘いことを考えてはいたが、よくよく考えてみれば一度イエスと言っておきながら後からそれを覆すには、はなからノーと告げる以上の勇気が必要だ。
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第3話

初心者でも簡単にできるメールでの顧客対応。それが、紹介されたアルバイトについて圭一が事前に聞いたすべてだった。指定された場所に行き、その建物がオフィスビルではなくマンションだと気づいたときには少しくらいは不思議に思った。しかし今までコンビニエンスストアや居酒屋といった接客業のアルバイトしか経験のない圭一には、それがどの程度普通でないことかまでは判別がつかない。戸惑いつつもエントランスで部屋番号を打ち込みインターフォン越しに名乗ると、スピーカーからは「おお、入れよ」と若い男の声が聞こえて自動ドアがすっと開いた。