死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 4|第70話

「あっ、ルーカス」  キスに夢中になってぼんやりとしていた頭の中に、ふっと電気が走る。前回やけになったルーカスに押し倒されたとき、混乱のせいか身に染み付いた潔癖のせいかラインハルトの体は一切反応しなかった、そのことを思い出したのだ。 「何?」  耳元に吹き込まれる声は甘く濡れて、...
死に神の名付け親

Chapter 4|第69話

ルーカスが足を止める。ラインハルトにはわかっている。今話をしないとルーカスは本当にここから去ってしまう。そしてもしかしたら今度こそもう二度と戻ってはこないかもしれないのだと。 「ルーカス、待ってくれ」  もう一度呼びかけるとルーカスがゆっくりと振り向いた。  言いたいことは山ほど...
死に神の名付け親

Chapter 4|第68話

残された言葉の意味も手の中にあるものの持つ意味も理解しかねている様子で、ルーカスは去ってゆくオスカルの背中をぼんやりと眺めていた。なかなかラインハルトの方を振り返ろうとしないのはきっと、彼もまたこの状況に戸惑っているのだろう。  もちろんラインハルトだって、ルーカスと二人きりで取...
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Chapter 4|第67話

オスカルがちょうど目隠しの位置に立っているせいでラインハルトには開いた扉の向こうが見えない。だから驚いたように動きを止めたオスカルの背中がはらんだ緊張の意味を瞬時に悟ることはできなかった。 「おまえ、いつから」  つぶやいて、オスカルが一歩下がる。そしてラインハルトは耳を疑った。...
死に神の名付け親

Chapter 4|第66話

「これ、殴られたんだ」  そう言って、オスカルは空になった右手で自らの口元の絆創膏を指して見せる。 「え?」  突然話を変えられラインハルトが思わず聞き返すと、オスカルは自嘲気味に小さく笑った。 「昨日あのガキが事務所にやってきて、何も言わずぶん殴ってきた。こっちは何の構えもなか...