死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 1|第5話

ルーカスはソファの横に置いてあったカバンひとつを手に、そのままラインハルトの後を追ってきた。父は息子の反抗的な態度にあからさまにむっとした様子だったが、それ以上何も言わず、もちろん引き止めることもしなかった。 どうしようもなく腹が立った。父親が何を考えて自分をここに呼び寄せたのか...
死に神の名付け親

Chapter 1|第4話

いくら感情を押し殺して生きているとはいえラインハルトだって鬼ではない。陰鬱な様子でリビングにいる見知らぬ少年が事故で両親を失ったばかりだと知れば、哀れみに少しくらいは心を動かされた。 だが、自分の部屋に赤の他人――しかも否応無しにコンプレックスを刺激してくる外見を持つ少年を連れて...
死に神の名付け親

Chapter 1|第3話

ラインハルトは一瞬、自分はやって来る場所を間違えたのだと思った。もしくは、時空がゆがんで奇妙な世界にでも足を踏み入れてしまったのかもしれない。 リビングの古ぼけて色の少しあせた革張りのソファに居心地悪そうに座っている少年――それはまるで、かつての自分のように見えた。 ほっそりとし...
死に神の名付け親

Chapter 1|第2話

朝になってから、ラインハルトは玄関近くの床に一枚のメモが落ちていることに気づいた。ドアに紙が挟まれていたのに気づかず、昨晩帰宅したときに飛ばしてしまったのだろう。 この部屋に電話は引かれていないから急ぎの連絡はアパートメントの大家宅の電話にかかってくる。そして大家は代わりに電話を...
死に神の名付け親

Chapter 1|第1話

半身をもがれたような痛みを抱えて、ずっと生きている。 傷は乾き、痛みが和らいだように感じるときもある。しかしちょっとした拍子にかさぶたは剥がれ、生々しい傷跡がむき出しになり、ときに血を滲ませる。 だから、できるだけ傷を隠して。 誰にも気づかれないように。 誰にも触れられないように...