僕と機械仕掛け

僕と機械仕掛け

第6話

広い廊下を歩いていき、大きな扉の前で立ち止まったベネットさんはドアノブに手をかける。  僕はすっかり怖気付いていた。だって、この先にいるのは知らない人だ。僕のおじいさんと名乗る、知らない誰か。いくらあのロボットに腹が立っていたからって、軽率だった。だって、ベネットさんはいつだって...
僕と機械仕掛け

第5話

車は一時間以上走った。ごみごみしてしょっちゅう信号に引っかかる街中を抜け、そこら中をあまり上手ではないグラフィティが汚す下町を抜け、やがて広々とした郊外に出る。その間の何もかもが珍しくて、僕はずっとぽかんと口を開けて窓の外を眺めていた。 「アキヒコ様は、この辺りは初めてですか?」...
僕と機械仕掛け

第4話

ベネットと名乗った白髪混じりのおじさんの言うことの意味がわからずぼんやり立ちすくんでいると、「AP-Z92-M」が横からさっと手を出して僕の肩をつかんだ。これまで常に優しく紳士的だった彼からは思いもよらない激しい動きだった。 「いけません」と、彼は強い口調でベネットさんに言った。...
僕と機械仕掛け

第3話

あいつが家を出て行った気配はない。別々の部屋とはいえ、いけ好かないロボットと二人きりで家にいるのは落ち着かない気持ちだった。腹立たしい気持ちのままに朝ごはんを断ったものの、部屋にこもって数時間もたてばお腹はぺこぺこになり、僕はだんだん心細い気持ちになっていく。  窓の外に目をやる...
僕と機械仕掛け

第2話

「……お母さんが?」  僕はとても信じられない気持ちだった。  だって、ときどき病院に通うようになってからも、具合悪そうにソファで休むことが増えても、とうとう入院してしまった後も、お母さんはいつだって僕の顔を見ると「大丈夫。すぐによくなるから」と笑っていた。お母さんは僕に一度だっ...