僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出

【閑話休題】AP-Z92-Mに関する特記事項(後)

アキヒコの暮らすテムズ川近くの住宅街から車を走らせ、郊外のラザフォード邸に近づくにつれて車窓には緑が増え、のどかな空気が漂う。  ベネットの父は、ラザフォード家住み込みの使用人だった。話に聞いたところでは、その父も、さらにその父も、代々ラザフォード家で仕事をしてきた。そもそもこの...
僕と機械仕掛けと思い出

【閑話休題】AP-Z92-Mに関する特記事項(前)

「……というわけで、先日の法定点検の結果、機能面での問題は特になかったとのことだ」  ラザフォード家の顧問弁護士であるエドワード・ベネットがそう告げると、かしこまった顔をしてダイニングテーブルに座っていた家事育児支援ロボットであるサーシャ――この名前は、現在の権利者である時期ラザ...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(26)

運ばれてきたアイスクリーム・サンデーは予想以上に大きくて、豪華で、素敵だった。  バニラ、チョコレート、ストロベリーと、アイスクリームは三種類。トッピングに本物のイチゴと、チョコレートで動物の顔を描いたマカロン。猫、熊、うさぎ……どれも食べるのがもったいないけれど、思い切って噛み...
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僕と機械仕掛けと思い出(25)

夕方になると僕は約束を守って家に電話をかけ、サーシャが迎えにやって来た。 「ご迷惑おかけしました。いつも急にお邪魔して申し訳ありません」 「いえいえ、最近あまり遊んでないみたいだからちょっと心配してたのよ。アキヒコくん、またいつでも来てね」  もしかしたらベンのお母さんも、僕たち...
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僕と機械仕掛けと思い出(24)

ひと晩眠ると前日サーシャに宣言したときの勇気は半分以下にしぼんでいた。学校に行くのは気が重かったし、シルビアに話しかけるのは怖かった。  それでも僕は、必ず今日シルビアに謝るのだと決めていた。  そういえばずっと前、小学校に入って最初の日にビビと喧嘩をした。絶対に自分は悪くないと...