僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(23)

前に「恋」について話したときもサーシャは「いずれわかります」と言った。そのときも、恋なんて面倒なことには一生関わりたくないと思ったけど、わがままになって人を傷つけるようなものであるなら――なおさら恋なんてしたくない。  なのにどうしてだろう、僕の知らない「恋」なるものをサーシャが...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(22)

ぽたぽたと、続けざまにこぼれ落ちる涙が床の色を変えていく。顔を手で覆ったシルビアは小さく嗚咽をあげて、肩を震わせて泣いていた。 「あ……」  しまった、女の子を泣かせてしまった。うろたえたところで、後ろから力いっぱい突き飛ばされた。 「ちょっと、どういうこと? 何してんのよ!」 ...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(21)

あの日を最後に、おじいさんを公園で見かけることはなくなった。気になって何度かサーシャと行ってみたけれど、ベンチはいつも空っぽだった。  バラの季節が終わった公園には興味をなくしてしまったのかもしれない。それとも家族の人にうんと叱られて、自由に家から出してもらえなくなったんだろうか...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(20)

まるきり知らない人に話しかけられた様子で怯えきったおじいさんに、おばあさんはつかつかと歩み寄ると腕をつかんで立ち上がらせようとする。 「はいはい、わかってますよ。でもあなたの妻は私なんですから、一緒に家に帰りましょう」 「そう……そういえば、そうだったか? だが」 「そうなんです...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(19)

おじいさんと並んで座っているうちに、でまかせではなく本当に待ち合わせをしているような気分になってくる。そして、多分それは、完全な思い込みというわけでもない。 「アキ!」  名前を呼ぶ声に、僕とおじいさんは同時に顔を上げる。 「おや、君の待ち合わせ相手が来たのかな?」 「……うん、...