うつくしいあし

うつくしいあし

エピローグ

「本当に手伝いはいらないの?」 「大丈夫だって。近距離だし、荷物の上げ下ろしは全部引越し屋がやってくれるし」  もう何度目かわからない問いかけに苦笑しながら同じ言葉を返す。母はそれでも不安げで、テーブルの陰に隠れたぼくの左脚にちらりと視線を投げかけた。 「でも、あっくんは脚...
うつくしいあし

第46話

「土岐津くんも、風邪を引きそうだから」  これまでぼくもずぶ濡れであることに気づかずにいた無神経さを恥じるように宇田は言った。だが、こちらは返答に詰まる。だって、いくらそういう雰囲気ではないと自分に言い聞かせても、実のところ宇田の手が断端から腿——つまり敏感な場所に近づいてくる...
うつくしいあし

第45話

 外国で、闇で脚の切断手術をうけるため——宇田が極めて質素な暮らしをしながら昼夜も休日も関係なしに働きつづけている理由はやはり、彼の脚に関係していた。 「闇なんて、危ないよ」  意味がないとわかっていながら、ぼくは陳腐な言葉で彼を諫める。そもそも闇手術などというものは現実に存...
うつくしいあし

第44話

 泣き顔を見られまいとしてか、宇田はもぞもぞと右膝を立てて顔を伏せた。しかし涙は止まらず、体ごとしゃくりあげるように震わせながら小さな声でぼくをなじった。 「……きれいじゃない。こんな脚、おれのじゃない。いらないんだ、ずっと」  その言葉にはっと息を飲んだ。  きれいだ、と...
うつくしいあし

第43話

 何をしにきたのか。それをひと言で言い表すのは難しい。ひどいことをしたと後悔しているから、宇田の容体を心配しているから、宮脇が宇田との距離を縮めていることに焦りを感じたから。綺麗事のような理由から身勝手なものまで、どれも偽ることのできない本音だった。  だが、雨の中探し回りなが...
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