うつくしいあし

うつくしいあし

第42話

病院を出て、電車に乗って自宅最寄り駅まで戻る。すでに外は薄闇。しかもいつの間にか空を雨雲が覆いいまにも雨が降り出しそうな空模様だ。しかしぼくは自宅に帰ることはせず、そのまま宇田の家に向かった。 出てきてくれるだろうか。出てきてくれたとして、話はできるだろうか。自信はないが、いまの...
うつくしいあし

第41話

「脚を……」 覚悟していた。むしろ確信していた。なのに現実として突きつけられると、全身にぞわりと鳥肌が立つ。「それで、怪我の具合は?」 巻から聞いた話からも、宮脇の落ち着きぶりからも、切断するほどの重症ではないのだろうと予想している。それでもいざ聞くとなれば緊張した。「前回よりは...
うつくしいあし

第40話

それから幸乃とは何度かメッセージのやり取りをした。繰り返される謝罪と「できればまた会いたい」。彼女もまた、あの日ぼくが口にした「少しずつ慣れていこう」という言葉を完全に信じてはいなかったのだろう。 どちらからも電話は掛けなかった。それなりに胸をときめかせ寂しい夜を埋めてくれたはず...
うつくしいあし

第39話

驚き、戸惑い——それから恐怖。幸乃の目の中にそれらの感情を見つけた瞬間、一気に興奮が冷めた。性行為への本能的な昂りだけではなく、それ以外の浮ついた感情もまとめてすうっと引いてゆく。「あ……」 察しの良い幸乃もまた、ぼくが《《気づいてしまったこと》》を知ったのだろう。半裸で向き合う...
うつくしいあし

第38話

ナンセンスだとわかっていても、宇田の殺風景な部屋を訪れたときのことを思い出し、重ねてしまう。そしてすぐに比較の意味すらないことに気づく。そのくらい、宇田の部屋と幸乃の部屋は何もかもが違っていた。 上がってすぐのキッチンには、限られたスペースを工夫して食器や調理用具、調味料などが所...