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51. 未生

年が明けても、尚人との逢瀬は一週間に一度ほどの頻度で続いていた。未生の若さからすればやや物足りないのが正直なところだが、なぜだか他にも相手を探そうという気にはなれない。誘うのはいつも未生だが、尚人の方も以前のような様式美の拒否を見せることはなくなった。電話口で淡々と予定を立て、平日のどこかで尚人の仕事が終わる八時過ぎに待ち合わせる。未生は面倒だとホテルに泊まってしまうこともあるが、尚人は必ず電車のあるうちに帰るから一緒に食事をするような暇もなくホテルに行ってセックスをして、十一時前後には別れるのがルーチンになった。
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50. 栄

猥雑な路地に足を踏み入れるのにはためらいがあった。尚人を裏切ろうとしていることへの後ろめたさと、本当に自分がそんな店に入ることができるのか疑わしく思う気持ち。栄の母親は、自身が小児喘息を患った経験があったからか栄と妹のことを過剰なほどに清潔な環境で育てた。部屋はいつでも完璧に片付けられて、床も家具もぴかぴかに拭き上げられていた。おかげで兄妹は完全な健康体に育ったが、その反動で衛生面の基準は高くなる。病的とまではいえないし生活する上で大きな不便はないが、おかげで栄は潔癖になった。
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49. 栄

「谷口、今度の水曜に中森と飲むんだけど時間あればおまえも来いよ。定時退庁日だし、いまの予算委の感じだったら国会も当たんねえだろ」自席にふらりと立ち寄った同期の矢頭から「中森」という名前を聞いた瞬間、栄はあまり面白くない気分になった。
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拍手&コメント御礼

今週末もご訪問、拍手、コメントありがとうございました。栄の社畜描写へのコメントありがとうございます。序盤では尚人視点で栄の精神DVっぽい描写が多かったので嫌われるキャラクターになるかしらと思っていたのですが、そうでもなさそうなのは社畜残酷物語的に苛めすぎているからでしょうか。
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48. 栄

終電で帰宅するとリビングに明かりがついていた。ドアを開けると、ダイニングテーブルに座って何やら作業していた尚人が顔を上げる。「あ、おかえり栄」「ただいま。ナオ、まだ起きていたのか」「うん、授業の準備とか書類仕事とか。もうちょっとだけ」