心を埋める

40. 栄

電話を終えた笠井志郎はすっかり集中力を切らしたようだった。栄は素知らぬ顔で資料を手に説明を再開するが、もはや話を聞こうというポーズすら見えない。「まったく、これじゃ話にならん」一体何が話にならないのかについてはまるで説明のないまま資料をテーブルの上に放り出すと、笠井は話を打ち切る態度もあからさまに眼鏡をはずして胸ポケットにしまい込んだ。
僕と機械仕掛けとビビ

第11話

「ねえサーシャ、ビビの家に連れて行って」 どうしても納得がいかない僕は思い切ってサーシャにお願いしてみることにしたけれど、案の定サーシャは冷淡だ。「……そんなの意味ないでしょう。引っ越したんですから家に行ったところで誰もいませんよ」 無表情に僕を見下ろし、たったの一言で僕の頼みを...
心を埋める

39. 栄

クリスマス前には来年度予算案も無事閣議決定されて、課内の空気も完全に年末モードに入った。こういうときこそ尚人より先に帰って家事のひとつでも、というのはあくまで理想に過ぎず、短い閑散期こと年末となると連日のように忘年会の誘いが入る。行っても二次会まで、終電で帰る、と自分にルールを課してはいるものの栄は思い描いていたほど帰宅時間を早めることができずにいた。
心を埋める

38. 栄

まっすぐ帰宅した栄だが、鍵を開けると部屋の中に人影はない。改めて腕時計を見ると時刻は十時半を回ったところだった。九時から十時のあいだには帰宅することの多い尚人にしては遅い。以前の栄だったらこの程度の遅れは気にしないところだが、先週の一件があった後だけに神経質になっていた。
お知らせ

拍手&コメント御礼

本日もコメントいただきありがとうございました。ここのところ調子よく連日更新ができているので勢いが途切れるのが怖い、と思いつついけるとこまでいきます! 本日はちょっと久しぶりの栄パートです。