恋で死ぬ。かもしれません

43. 蒔苗、嘘をつく

蒔苗はちらりとアカリに目をやるが、タートルネックで首を隠している姿を見ても何も言わなかった。だからアカリも自分からは何も言えなくなる。アカリとの真似事では蒔苗がもはや満足できずにいるなんて、考えたくはない。でも、昨日の夜もやたら「疲れているならやめとくか?」なんて、そんな人の体を気遣うようなこと一度も言ったことないくせに。
恋で死ぬ。かもしれません

42. 月曜日の絞殺魔

「月曜日の絞殺魔……」事件自体についてはぼんやりと知っているものの、その呼び名はアカリにとっては初耳だった。そもそもがよくある殺人事件のうちのひとつ程度の認識で、そんな呼び名がつくほど騒ぎになっているとは知らなかった。「知らないのかい? テレビや新聞ではぼかして伝えられているけどなかなか興味深い事件だよ。快楽殺人って、不謹慎だけど創作心がうずくよね」
恋で死ぬ。かもしれません

41. もしかして、飽きられてる?

蒔苗の部屋に持ち込んでいた洋服では首にくっきりついた指の跡が隠せなかったので、一度家に帰ってからタートルネックに着替えた。だがいくら十月とはいえ陽気が続いている中では暑いし、大学でも浮いてしまう。「アカリ、どうしたの厚着して」「ああ、風邪引いたみたいで喉が痛いから」
醒めるなら、それは夢

53. 第3章|1943年・ベルリン

ソ連との膠着する戦況が大きく変化したのは、一九四二年の冬のことだった。スターリングラードの制圧をほぼ成し遂げたと思われたところで、ソ連赤軍が大規模な反撃に出てドイツ軍をすっかり包囲してしまった。いくら強固な軍であっても、主要な補給経路を押さえられてしまえばなすすべもない。形勢は完全に逆転し、年が明けて間もなくドイツ部隊は投降した。
恋で死ぬ。かもしれません

40. 冷や水

目を覚ましたアカリは腰の重苦しさにほっと安心する。腰の重さは、眠っている間に蒔苗に抱かれたことの証だ。最初はあんなに嫌だった後始末をしていない中出しすら、今のアカリにとっては蒔苗の情熱を思い起こさせる甘い痕跡だ。ときには蒔苗が激しく自分を抱いたところを思い浮かべて、そのままベッドの上で自慰に耽けることすらある。寝室のクローゼットを開けると扉の裏側に大きな姿見がついている。アカリは裸のまま鏡の前に立ち自分の体のあちこちを確かめる。キスマーク、噛み跡、引っ掻き傷。そのひとつひとつを確認し、昨晩の行為を思い浮かべてみる。それだけで腹の奥に熱が溜まり鏡に映るペニスがピクリと震える。