醒めるなら、それは夢

51. 第3章|1941年・クラクフ

ニコの大叔母はゲットーで二度目の冬を迎えることができなかった。まずは寒気を訴えて高熱を出し、体にぽつぽつと発疹が出てきた頃にはニコと母親はそれが発疹チフスであることに気づいていた。「お医者さんを呼ばなきゃ」そう訴えるレーナに、母は悲しそうに首を左右に振った。「レーナ、お医者さんを呼ぶ必要はないわ」
恋で死ぬ。かもしれません

35. 逢瀬と邪魔者

夏の間に、アカリと蒔苗の関係は少しだけ変わった。アカリは再び蒔苗に体を任せるようになった。以前と違うのは、そこに金のやり取りが絡まないこと。代わりに、蒔苗もアカリの欲望を鎮めるのを手伝う。一応は対等なやり取りなはず、だ。特にどちらが言い出したわけでも、はっきりと約束しているわけでもないが、交互に相手の快楽に奉仕しあう関係はなし崩しにはじまり、秋になる頃にはすっかり板についてきた。
醒めるなら、それは夢

50. 第3章|1941年・ベルリン

新学期が始まって二週間ほどがたったある日のことだった。夕食後にラテン語を教えてもらう約束になっていたのに、マテーウスがなかなか戻ってこない。ユリウスは基本的に外国語全般が得意でないが、特にラテン語には見るのも嫌になるくらいの苦手意識を持っていた。ハンブルクのギムナジウムに通っていた頃は内容も初級程度だったためまだましだったが、ナポラにやってきて以降はレベルの高い授業になかなかついていけず、落第しないだけで精一杯といった調子だ。
恋で死ぬ。かもしれません

34. 新しい扉が開いたかも?

ボクサーショーツからはみ出た先端だけをくるくると指先で遊ばれ、ときおり思い出したように濡れた布地越しに茎やその下の膨らみをなぞってくる。とにかくじれったくペースの遅い触れ方に、アカリは身も世もなく体をよじる。これはセックスではない。そして、蒔苗はアカリの痴態をただ面白がっているだけで、本人はそれによって興奮することはない。――ということは、蒔苗自身は高まる欲望に追い詰められることがないのだから、いつまでだって延々とアカリを焦らし、からかい、のんびりと触れ続けることができるのだ。そう、例えば子どもが拾ってきた虫で飽きるまで遊ぶのと同じように。
恋で死ぬ。かもしれません

33. 焦らす指

周りだけでなく、と頼んだにも関わらず、蒔苗はしつこく乳暈ばかりを指でなぞり続ける。ポイントを外した愛撫は次第に気持ちよさより苦しさが勝るようになり、アカリは自ら体をずらして胸の先を蒔苗の指先に触れさせようとする。だが蒔苗はすっと手を離し、簡単には求めるものを与えてくれない。「なんで逃げるんだよ!」「いや、なんとなく」