王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第2話

通話の終わったスマートフォンの画面をぼう然と眺めることしばらく、怒りは少し遅れてからやってきた。「家を探せだって?」 初耳だった。というか、これこそ「話が違う」というやつだ。 だって前回ロンドンに滞在していたときは甘い生活――には程遠いものの、二ヶ月ほども栄のアパートメントで一緒...
お知らせ

拍手&コメント御礼

連載を開始した「王子と蝸牛」に拍手いただきありがとうございます。「王子と蝸牛」の「蝸牛」は? というコメントいただいておりますが、そちらは追々ということで。羽多野と栄の続きもそうお待たせしないつもりです。やっとお正月モードを抜け、書ける体制になってきたかな?
醒めるなら、それは夢(番外編)

ウィーン再訪編(4)|1961年・ウィーン

「そろそろ寝るか」とユリウスに声をかけられ、ニコはソファに座ったまま、すでに自分がうつらうつらしていたことに気づいた。「あれ……僕」じっと見つめてくる緑の瞳はいつもと同じように優しい。 
王子と蝸牛|心を埋める(番外編)

第1話

ポーン、と何度聞いても間抜けに響く効果音。続けて機内アナウンスがはじまる。|羽多野《はたの》|貴明《たかあき》は読みかけの本から目をあげるとちらりと腕時計に目をやった。「皆様、当機はこれより約二十分後にロンドン・ヒースロー空港に着陸いたします。最新の情報によりますと天候は晴れ、気...
長尾三佐の憂鬱な幸福|心を埋める(番外編)

初飲み編

時期的には「こぼれて、すくって」プロローグと第1話のあいだ(「長尾SS(出会い編)」のあと)。 今日の長尾は朝から至極ご機嫌だった。 大使館の外に一歩足を踏み出せばうんざりするほど暑いし、そんな中わざわざ出かけた打ち合わせは、相手方の突然の体調不良で空振りの憂き目にあった。仕事に...