
75. 第4章|1945年・アウシュヴィッツ
一九四五年一月、アウシュヴィッツの閉鎖が決定された。接近するソ連軍に発見されるのも時間の問題なので、今のうちに施設を破壊して撤退すべきという上層部の判断によるものだった。東からの移送者が増え、管理も行き届かなくなったアウシュヴィッツの状況はすでに半年ほど前からコントロールできない状況になっていた。前年の秋にはガス室の運営を担当させられていたゾンダーコマンドの一部が反乱を起こし数名の職員が殺害された。もちろん反乱の首謀者たち全員が鎮圧後すぐさま処刑されたが、ユリウスの目にこの事件はアウシュヴィッツ崩壊の合図であるように映った。