その他の番外|心を埋める(番外編)

その他の番外|心を埋める(番外編)

Summer Dressing(8.羽多野)

「とはいえ……」 腕時計にちらりと目をやって、羽多野はつぶやく。 金曜日、時刻は午後五時を回ったところ。気の早い同僚たちは昼食を終えた時点で週末モードに入っており、だらだらと午後を過ごして勤務時間終了すると同時に次々とオフィスを去っていく。 もちろん羽多野とて例外ではない。すでに...
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Summer Dressing(7.栄)

「……はあ」 Tシャツとスウェットを忌々しい気持ちで洗濯機に投げ込んでから、栄は大きなため息を吐いた。 大使館職員としての半ば義務である、と久保村に退路を断たれるかたちで、和太鼓チームのメンバーになって以来、週に二度ほどのペースで業務終了後に練習に参加している。 人様の前で演奏す...
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Summer Dressing(6.トーマス)

アリスの放言にトーマスはギョッとした。一瞬、愛おしい恋人の口を手でふさぐべきかと頭をよぎったくらいだ。天真爛漫なのは彼女の愛すべき個性だが、日本人相手だといささか遠慮がなさすぎるのは困りものだ。「アリス、そういうことは言わないで。これはソープオペラじゃなくて現実世界の話だし、僕に...
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Summer Dressing(5.羽多野)

羽多野は約束の時間の十五分前にはタイ料理店に到着して、友人カップルの到着を待ちかまえた。 メニューを眺めながら、前の晩、げっそりと疲れた顔で帰宅した栄の姿を思い起こす。 仕事に追い詰められているときとは違うどんよりとした表情。朝までの羽多野なら、その裏に隠されたものを探ろうと躍起...
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Summer Dressing(4.羽多野)

羽多野はここのところ、嫌な予感を募らせている。栄の様子がおかしいのはいつものことだが、それが隠しごとをされている気配とくれば、放っておくわけにはいかない。 正面から確かめるのは悪手なので、朝の慌ただしさに紛れて軽く探りを入れてみる。「そういえば、同僚からうまいタイ料理屋を教えても...