僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(18)

僕には好きとか結婚とか一生とか、そういった難しいことはわからない。でも、おじいさんのしわくちゃだけど優しい手の感触と「大切な人」という言葉にぱっと頭に浮かんだのは――今ごろキッチンで僕のために夕食を準備しているであろう、凜と背筋の伸びた後ろ姿だった。「うん、そうだよ」 僕は、はっ...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(17)

「バラの花?」 おじいさんはバラの花のことも、すっかり記憶からなくしてしまったみたいだ。覚悟していた返事だけれど、少しだけ寂しい気持ちになる。 僕は右手を挙げて、バラの植え込みを指で示した。「うん。そこのバラ、何日か前は満開ですごく綺麗だったんです」 するとおじいさんは、ゆっくり...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(16)

その日の帰り、交通事故のせいで大通りはひどく渋滞していた。「まったく、これじゃ何時間かかるかわからん」 気の短いベネットさんはちっとも動かない車の後部座席で舌打ちをして、運転手に裏道を抜けるよう指示した。 裏道というのはつまり、住宅街の中を編み目のように走る狭くて入り組んだ道のこ...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(15)

週末、郊外にあるおじいさんの家に行くと、あのいまいましいパブリック・スクールのパンフレットは相変わらずリビングのテーブルに置いたままになっていた。いや、いつだって何もかもがきれいに整えられたこの家で不要なものが意味もなく出したままにされているはずはない。僕がやってくるから、わざわ...
僕と機械仕掛けと思い出

僕と機械仕掛けと思い出(14)

乱暴に手を振り払っても、サーシャは怒らなかった。つまり彼は、僕が悲しいのを我慢していることに気づいている。強がろうとしても、結局何もかもばれてしまっている。恥ずかしくてちょっと情けないけど、同時に僕はほっとした気持ちになった。 家に帰るとサーシャはすぐにキッチンに立ち、コンロでお...