サクラ踊る踊る

第12話

これは一体どういうシチュエーションなのか。なぜ突然こんなにもうろたえた顔をして和志が助けを求めてくるのか。圭一は瞬時には理解できなかった。「和志。ど、どうしたんだ?」勢いと切実さに負けて、急いで家に逃げ帰るつもりだった圭一は後ずさりしながら再び和志の部屋に戻る羽目になった。付き合いは長いが、いつもマイペースで飄々としている和志がこんなに動揺しているところは一度も見たことがない。
神を屠る庭

12. おしゃべりな異物

リュシカと名乗った美しい少年があの大男に「アイク」と呼びかける声色や、彼に名前をもらったのだと嬉しそうにつぶやく姿を見て、セスは漠然と二人の関係は特別で尊いものなのだろうと感じていた。 気持ちは複雑だ。クシュナンと自分しか存在することのなかった小屋へリュシカという美しい異物を入れ...
神を屠る庭

11. 生贄と抵抗

セスはそのまま眠ることができず夜を越え、朝になると部屋の前で兄を待ち構えた。「……セス」 兄は思い詰めたような顔をして部屋の前に座り込んでいたセスの姿を認めると渋い顔をする。伊達に長い時間を一緒に過ごした訳ではない。セスが昨晩の騒動に気づいていることも、今ここにいる理由も、スイは...
神を屠る庭

10. 美しい虜

外の騒がしさにセスは目を覚ます。 若者たちが狩りから戻ってきたのだろうか。これだけ賑やかだということは、よっぽど大きな獲物をしとめたのかもしれない。セスが狩りに出ることを許されたのは結局、神の使いであるクシュナンを見つけたあの晩が最初で最後だった。 神の使いの世話役という名誉な仕...
サクラ踊る踊る

第11話

食事を終えて部屋に戻ると、ベッドの上には洗ったばかりとおぼしき寝具が置いてあった。圭一の父親はまめなタイプでない。今日の朝、圭一から「今夜帰る」とメッセージを受け取って、慌てて寝具を洗濯乾燥機に放り込んでから仕事に出かけたであろうことは、皺の多いシーツと枕カバーを見ただけでわかる。久々に帰宅する息子に清潔な寝床を準備しようと思ってくれたことだけでもありがたいと素直に思えた。