神を屠る庭

4. いましめと傷

男は疲れたように頭を壁にもたせかけると再び目を閉じた。まるで意思の疎通ができないセスなどそこに存在していないかのように――その発想はひどく悲しいものだが、心情は理解できる。 彼は最初に断崖で見つけたときと比べていくらかやつれたように見える。ここに来てから数日、セスが世話役に指名さ...
サクラ踊る踊る

第6話

やがて圭一はむくりと起き上がると、ゴミの山に投げ込んだスマートフォンを拾いに行った。面白くない。何もかも面白くない。そして、やり場のないイライラをぶつける先として思い浮かんだのが、他の誰でもないさっきのメールの送信主だった。どうせ、ろくでもないアイドルオタクだ。相手だってまさか本気で十六歳のアイドルと友達になれるなどとは思っていないはずだ。ちょっとからかってやるくらいなら罪にもならないだろう。それはほんのいたずら心だった。
神を屠る庭

3. 新しい務め

数日後、セスはスイの部屋に呼ばれた。 初めて狩りに参加した晩以来、二度目を誘う声がかかっていないことから何となく用件は想像できた。いくらスイが弟に対して寛容であるとはいえ、病気がちな父の後を継いで近い未来に|長《おさ》となる立場としては集落の若者たちから身内びいきで反感を買うこと...
神を屠る庭

2. 神の使い

その晩の狩りは奇妙な終わりを迎えた。カイは断崖にたたずむ褐色の男を「神の使い」と呼び、仲間に協力させて捕まえにかかった。敵意もなさそうな見知らぬ男に乱暴をする意味がわからず、何かの誤解があるのだろうと思ったセスは止めに入ろうとする。だがカイは舌打ちをしてセスを突き飛ばした。「邪魔...
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第5話

そもそも圭一は和志に構われるのが嫌で実家を出たわけで、その元凶が食べ物だけ置いてさっさと部屋を出て行ってくれるのは願ったり叶ったり――であるはずだ。ひとりになった部屋で、圭一は早速差し入れの料理を皿に取り分けた。久しぶりに食べる和志の祖母の手料理。ほぐした鮭と薄切りにしたキュウリを混ぜ込んで、上にたっぷりの錦糸卵と白ごま、そしていくらをトッピングしたちらし寿司は相変わらず絶品だ。甘酸っぱい酢飯にごまの香ばしさとキュウリの歯ごたえがたまらない。揚げてとろとろになったナスにひたひたの出汁を含ませた揚げだしも美味しくて、これならばナスの二、三本分だってひとりで平らげてしまえそうだ。