神を屠る庭

1. 手の鳴る方へ

誰かが手を鳴らしている。大きな月が明るく照らす夜、遠くから聞こえてくる小さな音に気づいたセスは立ち止まった。そこは普通であればたやすく迷ってしまうに違いない夜の森。しかし代々この山深い場所で暮らしてきたセスの集落の人間にとっては、複雑な地形も夜の暗さもほとんど問題にはならない。彼らにとってこの森は庭のようなもので、月明かりさえあれば昼間と変わらず軽やかに動き回ることができる。
サクラ踊る踊る

第4話

「うーん……」テーブルに置いた真新しいスマホとマニュアルを見つめて圭一は頭を抱えていた。高岡のマンションを後にしたときは重苦しい空気から逃げられた解放感に安堵したものの、今となっては持ち帰ってきたこれらがひたすら重い。後で断ればいいなどと甘いことを考えてはいたが、よくよく考えてみれば一度イエスと言っておきながら後からそれを覆すには、はなからノーと告げる以上の勇気が必要だ。
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第3話

初心者でも簡単にできるメールでの顧客対応。それが、紹介されたアルバイトについて圭一が事前に聞いたすべてだった。指定された場所に行き、その建物がオフィスビルではなくマンションだと気づいたときには少しくらいは不思議に思った。しかし今までコンビニエンスストアや居酒屋といった接客業のアルバイトしか経験のない圭一には、それがどの程度普通でないことかまでは判別がつかない。戸惑いつつもエントランスで部屋番号を打ち込みインターフォン越しに名乗ると、スピーカーからは「おお、入れよ」と若い男の声が聞こえて自動ドアがすっと開いた。
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第2話

圭一と和志の出会いは、三歳の頃までさかのぼる。郊外のベッドタウン。代々の土地に三世代で暮らしていた和志の家の隣の空き地に建て売り住宅が建ち、圭一の両親がそこを購入した。
お知らせ

「サクラ踊る踊る」の連載を開始しました

ゆるくて軽くて短めなコメディです。ムーンライトノベルズへの転載は完結後にまとめて行う予定。先週は完結続きでした。拍手、コメント感謝しております。「醒めるなら、それは夢」は本当に自分にこれだけのボリュームの話が書けるのか? と初心者が半信半疑で書きはじめた話なので、感想がひときわあ...