醒めるなら、それは夢

56. 第3章|1943年・クラクフ

イツハクは指先でニコの唇をこじ開けると、戯れるように差し込んだ長く節くれだった指で口内を犯しはじめた。「まあこんなクソ寒い場所で未経験者の狭い尻相手に格闘なんかしたら、こっちのあそこがもげちまいそうだな。俺は残念だが、ニコ、おまえは運がいいよ」
醒めるなら、それは夢

55. 第3章|1943年・クラクフ

夜明けまで眠れず過ごしたが他に名案は浮かばず、ニコはイツハクを訪ねることを決めた。ユリウスとの行為を宗教的にも社会的にも許されないことだと怒った兄は、今ニコがやろうとしていることを知ったらなんと言うだろうか。母と妹を守るためであれば、ひどくは叱られないだろうと自分を慰めた。
醒めるなら、それは夢

54. 第3章|1943年・クラクフ

「おい、近々また大きな移送があるらしいぞ」「本当か? 規模はどのくらいになるんだ」「わからない。ただ今までとは比べものにならないって話だ。評議会の関係から聞いたから多分ただの噂じゃないな」
恋で死ぬ。かもしれません

50. 病めるときも健やかなるときも

マークと百合子の結婚式が行われたのは、十二月はじめのよく晴れた日曜日のことだった。安定期まで待って、などと言ってはいたものの、百合子はあの後すぐに猛烈なつわりに襲われてしまい、周囲に妊娠を隠し続けることは不可能になった。幸いゼミのメンバーも、他の友人も百合子の決断を尊重し祝福した。百合子は三年の学期末を終えたら一年の休学という名の産休育休に入る予定だ。
恋で死ぬ。かもしれません

49. 愛を確かめるための

蒔苗はそっとアカリに口付ける。動画の中で見たような、病院でされたような、優しく軽い口付けが何度も唇に落とされ、やがてアカリの側がそれだけでは堪らなくなる。両腕を蒔苗の後頭部に回し逃げないようにしてから、唇と唇はぎりぎり触れない程度の距離でアカリは舌を出す。様子を伺うように唇を軽く舐め、合わせ目をつうっと舌でなぞるとあっさりと開き、侵入を許してくれた。