恋で死ぬ。かもしれません

29. 欲求不満の行き着く果て

息苦しいほどの草いきれに性感を掻き立てられるのは一体どうしてだろう。青臭い匂いや熱気が汗や精液を思い起こさせるからだろうか。気づけばアカリは公園で立ったまま後ろから貫かれ、揺さぶられている。ずいぶんお預けだったから狭くなっていたようで、挿入するときには苦しそうな、でも気持ち良さそうなうめき声が背後から耳をくすぐった。アカリもひどく興奮して、触れてもいないのに勃ち上がった性器からとろとろと大量の先走りがこぼれるのを止められない。
恋で死ぬ。かもしれません

28. だって、眠る自分に嫉妬するから

そして二週間、アカリは連戦連敗を積み重ねた。あの日作れなかった焼きそばは「材料がもったいないから」と無理矢理押しかけて翌日に作ったが、これまで使われた形跡のないピカピカのキッチンで出来上がったのは、食べられないほどまずくはないものの感動するほど美味しくもないなんとも微妙な代物だった。
醒めるなら、それは夢

47. 第3章|1941年・ベルリン

意外にも、ユリウスはナポラでの生活に馴染んだ。ひとりっ子のユリウスにとって集団生活は不安でしかなかったが、同じ部屋で四人もの人間が寝起きすることにも、風呂やトイレを赤の他人と共用することにも、始終誰かしらが近くにいてろくろくひとりになる時間すら持てないことにもやがて慣れた。
恋で死ぬ。かもしれません

27. 血と指と舌

ぬるりと柔らかく生温かい感触が指を包み、這い回る。少し遅れて強く吸い上げる動き。痛みを感じる間もなく訪れた異様な感覚にアカリは目が回り、そのまま卒倒してしまいそうだった。指が、指が、指が……蒔苗に、俺の指が……。いや待てよ、指を舐められたくらいで動揺するなんてガキじゃあるまいし。ぐらぐらする体を何とか支えアカリは冷静を装って――といっても実際のところただ硬直していただけなのだが、指先の隠微な感触に浸った。
恋で死ぬ。かもしれません

26. 攻勢、一転

蒔苗と次に会う機会は思ったより早く巡ってきた――というのは正確ではない。悩んで悩んで結局アカリの方から約束を取り付けたのだ。「あのさ、蒔苗って普段なにやってんの?」自分から初めてかけた電話では、第一声でみっともなく声がひっくり返った。「何って、別に。本読んだり、DVD観たり……」