醒めるなら、それは夢

46. 第3章|1940年・ベルリン

ユリウスはカスパーを殴ったが、カスパーもユリウスを殴り返した。理由が理由なだけにどうしたらいいのかわからずラルフがおろおろしているところに、戻ってきたマテーウスが驚いて悲鳴をあげる。騒ぎは誰もが知るところとなり、ユリウスは編入三日目にして懲罰室行きとなったが、殴り返したことでカスパーも同罪と見なされた。
恋で死ぬ。かもしれません

25. 愛のあるセックス

蒔苗と並んで歩くのは久しぶりのような気がする。というか、まともに二人で歩くこと自体はじめてかもしれない。アカリが後を追ってきても蒔苗は特に嫌がる素振りは見せないが、だからといって嬉しそうでもない。要するになんの手応えもない。一方のアカリも勢いで一緒に出てきてしまったものの特に何か話題や目的があったわけでもないので、結局二人は黙ったまま大学の門まで並んで歩く。
恋で死ぬ。かもしれません

24. 恋愛成功の秘訣

図書館に本を返すため一週間ぶりに大学に行き、ついでにゼミ室に寄ろうと構内を歩いていると、ちょうど百合子と出くわした。「あれ、アカリ久しぶり!」百合子は妙に楽しそうでつやつやしている。一方のアカリは、もはやしおしおでこのまま枯れて朽ちてしまいそうな気分だ。
醒めるなら、それは夢

45. 第3章|1940年・ベルリン

ハンブルクからベルリンへは一本の電車で行くことができる。しかも高値ではあるが特急列車を使えば二時間少々だ。別れ際に父は「体に気をつけて、休暇には戻って来い」と告げたが、ユリウスはうつむき黙ったまま列車に乗り込んだ。ユリウスが編入することになったのは、ベルリンにあるナポラ、「NPEA ベルリン=シュパンダウ」で、ベルリン西部の二つの川が交わる街に位置する。ユリウスはひとりで長距離列車に乗ることも初めてなら大都市と聞くベルリンに行くことも初めてだったのでひどく緊張した。もっとも乗り換えの心配をせずにすむだけでもまだましだったが。
恋で死ぬ。かもしれません

23. 人生には三つの坂がある

えー、人生には三つの坂がありまして。上り坂、下り坂、そして。――まさか。そう、そのまさかだ。アカリは狭いパイプベッドの上でゴロゴロと転げまわり、最終的にベッドから安っぽい合板フローリングの床に落下した。一階にある部屋のいいところは、家賃が安いことだけでなく多少音を立てたところで階下から文句を言われないことだとしみじみ思う。