醒めるなら、それは夢

41. 第3章|1939年・ハンブルク

一九三九年三月、ドイツは隣国であるチェコスロバキアを併合した。前年の九月にミュンヘンで行われた国際会議で英仏伊の首脳がヒトラーに譲歩した結果、まずはズデーテン地方がドイツに割譲された。それを契機に政府への不信が高まり民族運動が激しさを増す中、周辺国ハンガリーとドイツの領土的野心の板挟みになったチェコスロバキアは、結果としてドイツの従属国としてのスロバキア共和国の独立や、チェコのドイツ保護領化を許すこととなった。
恋で死ぬ。かもしれません

15. 殴ってはみたものの

痛む体を引きずって大学にたどり着いたアカリはとりあえず教室に向かい二限の授業を受ける。そして午後、ゼミ共用の部屋に行くと当たり前の顔をしてそこにいる蒔苗に歩み寄り――。「おい、蒔苗」名前を呼んで少しだけ時間を与えるのは武士の情け。でもそれ以上は容赦しない。アカリは思いきり蒔苗の頬に右フックを見舞った。防御態勢を取っていなかった蒔苗はそのまま椅子から転がり落ちた。ついでに椅子も倒れたため、部屋にはけたたましい音が響き渡る。
醒めるなら、それは夢

40. 第3章|1939年・ハンブルク近郊

ついさっきまで視界は真っ暗だったが、厚い布地越しに差し込んでくる光のおかげでようやく少しだけ周囲が見えるようになってきた。夜が明けたのだ、とニコは思う。一睡もできないまま夜を越え、朝になった。これまで眠らずに朝を迎えたことなど一度だってないのに、神経が高ぶっているせいか落ち着かない環境にいるせいか眠気はまったく襲ってこない。
恋で死ぬ。かもしれません

14. ひとりの朝

苦痛の中で、じわじわと意識が戻ってくる。頭が痛い。割れそうだ。強烈に喉が渇いていて水を飲まなければ干からびて死んでしまいそうだ。でも、何か口に入れたら吐いてしまいそうなくらい気分も悪い。冷房を入れたまま眠ってしまったのか、やたら寒いし、体のあちこちがひりひりする。ちなみにセックスのときに使う部分もひりつく。要するに多分、満身創痍。
恋で死ぬ。かもしれません

13. 眠りの落下速

「何これ」「アルコールと一緒に摂るとよく効く」「だから、何だよこれ」「睡眠薬だ。ちゃんと処方されたやつだから危険じゃない。明里はそれを飲んで寝ているだけでいい」アカリは反射的に、手にした薬のパッケージを蒔苗の顔面に投げつけた。