醒めるなら、それは夢

39. 幕間|1948年・ウィーン

「レオ、郵便が来ているよ」老婦人がテーブルの上に封書を置く。〈レオ〉――そう名乗るのはもはや正確ではないのかもしれない、しかし今手にしているのは「ドイツ出身のユダヤ系難民であるレオポルド・グロスマン」としての身分証のみだから、とりあえず対外的にはその名を名乗る他にはなかった。
醒めるなら、それは夢

38. 幕間|1947年・ウィーン

挨拶もなしに部屋に駆け込んできたハンスが「大変だ、レオが倒れた!」と叫んだとき、ニコは驚きと恐怖のあまり心臓が止まるのではないかと思った。大家の部屋に泊まったラインハルトを家まで送り、そのまま仕事に行くのだとレオ――正直言ってこの名前にはまだ馴染まないが――が部屋を出て行ってから三時間ほどが経過していた。
恋で死ぬ。かもしれません

12. 冷めたピザ、そして錠剤

「蒔苗おまえさ、ホスピタリティって言葉を知らないのかよ」がっくり頭を垂れるアカリの姿も蒔苗にはまったく響いていないようだ。それどころかピザが冷え切っていることなど一切気にしていない様子で、椅子にかけると食べかけの一切れを手に取り口に運びはじめる。
恋で死ぬ。かもしれません

11. アカリ、蒔苗の部屋を訪問する

アカリは陥落した。一回五万円の魅力は、日々の暮らしに汲々とするアカリにはあまりに強力すぎた。もちろんそれが天敵である蒔苗の申し出を受けるもので、しかもそれが蒔苗と「死体のふり」でセックスをするという奇妙奇天烈なものであったとしたも。
恋で死ぬ。かもしれません

10. アカリ、金に目がくらむ

「嫌だ」アカリは即答した。そりゃそうだろう。こんな突然で、しかも突飛な頼みを二つ返事で受けるような人間がこの世のどこにいる。しかし蒔苗は、アカリに断られたことがさも心外であるかのように眉根を寄せた。