まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

22.栄

「ゲイ……?」 一瞬聞き間違いかと思った。しかしジェレミーはこくりとうなずく。 予想外かつ、唐突すぎる告白だ。 自分の志向を隠すためにできるだけ鈍くあろうと努力してきた結果、どうやら栄には多くの同性愛者に備わっているという「同類を見分ける能力」が欠如しているらしい。だから尚人と距...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

21.栄

チクリと首元を何かに刺されたような気がした。ほんの一瞬だったので蚊にでも刺されたのかと思って栄は眠り続けた。朝になって手で触れてみたところ、特に熱も腫れも感じない。きっと夢だったのだろう。 そんなことより、栄の憂鬱は深まるばかりだ。 羽多野の様子がおかしい。普段なら触るなと言えば...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

20.羽多野

封筒の中身、それこそレポートの中身までざっと確かめてみたが、「度を越して不審なもの」――たとえばデートの証拠だとか、色恋を想起させるメッセージなどは一切見当たらなかった。羽多野は栄が風呂から上がる前に封筒を元どおりにしまい、何も探っていない・気づいていないふりを決め込むことにする...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

19.羽多野

ただでさえ栄の妙な態度に気が滅入っているところに神野のたわ言にまで付き合わされた。自宅――と呼べば栄は相変わらず嫌味のひとつくらいは言ってくるのだろうが――のドアに手をかけたところで、羽多野は体の芯からじんわり疲れがにじむのを感じた。「ったく、歳かな……」 コキコキと肩を鳴らしな...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

18.羽多野

ここ数日の家庭内のぎこちなさを思い起こして大きなため息を吐いたところでドアがノックされた。「……どうぞ」 返事をすると、ひょっこりと顔を出したのは神野小巻だ。結局パブの夜の意思表明に押し切られるように羽多野は彼女の教育係を引き受けている。「頼まれていた資料ができたので、今お見せし...