まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

17.羽多野

栄の様子がおかしい。勝手な思い込みや考えすぎが原因でふさぎ込んだり八つ当たりしてきたりするだけならば平常運転の範疇だ。しかし今回はそれとも様子が違っている。 きっかけは何だったか。ジムで出会った男に栄が簡単に気を許した件、そして翌週はじめに羽多野が連絡もなく酒を飲んで遅くなった件...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

16.栄

出会った日に名刺を交換したものの、その後はジェレミーから特段の連絡はなかった。栄としても羽多野に妙な詮索をされるのが面倒なので、彼との出会いが社交辞令で終わるのならば、それならそれで良いと思っていたところだったが、メールが届いてしまった以上は無視するわけにもいかない。〈先日ジムで...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

15.栄

栄は落ち込んでいた。普段から、取り繕った外面からは決して想像できないであろう内省的な部分を持ち合わせているのだが、今回は日常のささいな逡巡や後悔とはレベルが違う。 突如現れたインターン女に対抗するために、柄にもない行動に打って出たところが目も当てられない大失敗。しかももともとコン...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

14.栄

「はあ?」 頭上から降ってくるのは気の抜けたため息。普段ならば食ってかかるところだが、今はそんな気にはなれない。 栄だって、できれば潔くそれを口に含みたい。敵前逃亡など耐えがたいほどに惨めだ。だが、どうしてもこれ以上顔を近づけることができないのだ。「ちなみに、俺は風呂に入ったばか...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

13.栄

羽多野は愛撫の手を止めてしばし考え込んでいるようだった。 栄にとってこの間は嬉しくない。あんな恥ずかしい言葉、勢いで口にしているに決まっているのだから勢いで応じて欲しい。一秒経つごとに羞恥心が増していたたまれない気持ちになる。 ――さすがに我慢も限界だ。「や、やっぱりもういい。そ...