まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

12.栄

どうせまた後でシャワーを浴び直す羽目になるのだからドライヤーなどほどほどでいい。ほんのり髪を濡らしたままで栄は羽多野の寝室の前に立った。 ついさっき冷淡な態度を取ってしまっただけに気まずさはあり、一度小さく深呼吸してからドアをノックした。「どうぞ」と、短い返事を確認して扉を開けた...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

11.栄

まだ羽多野が失礼で迷惑なだけの居候だった頃、「栄と尚人のセックスはお上品で退屈なものだったに違いない」といった意味合いの言葉で揶揄されたことがある。悔しいが否定はできなかった。 そういえばあの男を蹴り出さずに家に置いてやったのも、尚人しか知らない栄が次の恋愛で失敗することがないよ...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

10.栄

真意まではわからないが、少なくともトーマスは素直に栄の説明を受け入れたようだった。今日のランチは大使館そばのイタリア料理店でパスタ。ボンゴレを口に運びながらうなずいて見せる。「へえ、インターンですか。羽多野さんのお勤めは確か、シンクタンクでしたよね」 一方の栄の目の前にはマルゲリ...
まぶたに蜜|心を埋める(番外編)

9.栄

それらのキーワードが何を連想させるかは、あまりにも明白だ。 それでも栄には羽多野の真意がわからなかった。嫌がらせ――つまり嫉妬させようとしてわざと煽るようなことを口にしているのか、それとも悪気なく天然で言っているのか。 口も態度も悪いとはいえ普段の羽多野は栄に対して献身的といって...
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8.栄

いくら待っても帰って来ず、連絡すらない。この数時間で軽く十回、いや五十回は通知も来ないのにメッセンジャーのトーク画面を確認した。 羽多野が帰ってきたのは、いいかげん痺れを切らした栄がこちらからメッセージのひとつでも送ろうかと思った頃だった。「ただいま」 いつもどおりの呑気な声。ど...