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34. 未生

優馬を部屋に戻した後も何となく目が冴えてしまい、未生はベッドに横になったまま眠らずにいた。しばらくスマホゲームをして、飽きてきた頃に着信音が鳴る。相手の名前を確かめてから少し迷って通話ボタンをタップした。「もしもしーっ、未生?」
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33. 未生

未生がアルバイトを終えて家に着いたのは日付が変わった頃だった。個人経営の居酒屋でのアルバイトは大学に入って間もなくはじめたのでもう二年目になる。愛想を振りまくのは大の苦手なので厨房希望で入ったはずなのに、若い女に受けが良いとかで最近はホールに出されることも多い。正直不本意ではあるものの、給与に色をつけてもらうということで納得している。
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32. 未生

夜も明ける前から部屋を出て行った尚人を見送って、未生は二度寝を決め込んだ。規定のチェックアウト時刻直前に起き出してシャワーを浴び、そのまま大学へ向かうことにする。遅刻はしたものの、出席認定されるぎりぎりの時間に二限の講義に滑り込んだ。やる気の薄い講師の授業をやる気の薄い学生たちが聞いている、いつ見ても覇気に欠ける教室だ。
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31. 尚人

喉の渇きで目を覚ます。ゆっくりと目を開きながら、尚人はまずマットレスの硬さが普段と異なっていることに違和感を覚えた。次に自分が何も着ていないことに気づき、さらに隣に見知らぬ温度があることを認識する。渇きだけでなく喉の奥には軽くひりつくような痛み。そっと体を起こして飲み物を探そうとすると、横で寝ていた未生がもぞもぞと動いた。
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30. 尚人

首筋をくすぐられながら耳に熱い息を吹きかけられる。覆い被さってくる体の圧迫感に、久しぶりに人の重さを思い出した。触れてくる唇や指先は尚人の知るものよりは荒っぽいが、宝探しのようにあちこちを探られると弱い場所はすぐに暴かれる。指先でうなじを撫でられながら首筋に口付けられるとそれだけで体が震え、待てをさせられている腰が甘く疼いた。