こぼれて、すくって

こぼれて、すくって

第61話

栄が尚人との関係への苦い気持ちを引きずっているのと同様に、尚人も栄に対しては罪悪感を抱き続けている。そのことはわかっていた。どのような経緯があったにしろ栄という恋人がいる状況で尚人が未生と寝たことは確かで、その裏切りをいくら栄が許したところで後ろめたさは消えることがないのだろう。...
こぼれて、すくって

第60話

緊張しながら読んだがメールの内容自体は何ということもない。最近片付けをしていて尚人の古いノートの間に紛れ込んでいる栄の手帳を見つけた、というものだった。もう五年ほど前のものだが必要であれば送る、と。 栄の手帳などただスケジュールばかりを書き込んだ実用本位のもので、大切に保存してお...
こぼれて、すくって

第59話

羽多野と栄の関係がもし友人ではないのだとすれば? 栄の意地の悪い問いかけにリラは絶句した。子を作れない男など不要だと自分から捨てておきながら、元夫が今は男と寝ていると思えばやはりショックなものなのか。 あからさまに動揺するリラに気を良くした栄は、さらに言葉を重ねる。「男性としての...
こぼれて、すくって

第58話

「子どもが……?」 いくら離婚した妻とのあいだとはいえ羽多野に子どもがいるというのは栄にとって望ましくない事実だ。だから先ほど現れた少女がリラと再婚相手の子だと知って安堵を覚えた。だが、一般的な家族計画とは縁遠い人間である栄にとってはそこが想像の限界で、つまり子どもの有無こそが羽...
こぼれて、すくって

第57話

あれがリラの娘、そう認識した瞬間に栄の心臓は跳ねた。しかし、続いてゆっくりとした足取りで店に入ってきた男が優しい声で少女をたしなめる声に落ち着きを取り戻す。「こら、ママは大事なお話をしているから終わるまで離れた場所で待ってるって言っただろう」 男は明らかなアングロサクソン。そして...