こぼれて、すくって

こぼれて、すくって

第41話

栄は何も言い返せなかった。 もちろん頭の中には瞬時に多くのことが駆け巡った。本当に起こそうとしたのか。体を拭いて着替えさせたというのはつまり全裸にして触れたということなのだろうが、本当に余計なことはしなかったのか。なぜカウチに行かずに同じベッドで寝たのか――。 すべての疑問に口を...
こぼれて、すくって

第40話

週明け、月曜日の午前中に申し訳なさそうな顔をした長尾が栄のオフィスを訪れた。「谷口さん、金曜はどうもすみませんでした」 長尾の乗った鉄道が遅延したおかげで栄は羽多野を食事に誘うことになり、その帰りに偶然トーマスたちと出くわしパブに繰り出した結果があの夜の出来事。風が吹けば桶屋が儲...
こぼれて、すくって

第39話

指摘されてはじめて栄は視線を自分の下半身に向けた。スウェットをあからさまに持ち上げる場所を恥ずかしく思うが、意識してしまったが最後おさまるどころか体中の血液がそこに集まりはじめる。 羽多野は改めて栄の足首を持ち上げると音を立ててくるぶしに口付けて、そのまま濡れた唇でふくらはぎまで...
こぼれて、すくって

第38話

「何やってるんですか!」 抗議の声を出したときにはすでに両手首は封じられ、頭上にねじ上げられている状況だった。ねじ上げるといっても痛みを感じるほどの強さではないし、柔らかく滑らかな感触はシルク――いや、そんなこと今はどうだっていい。「いいから、ちょっと黙って」 羽多野は栄の腕を縛...
こぼれて、すくって

第37話

自分よりははるかに色事の経験が豊富な男がやることを注意深く見ておきたいというある種の向学心もあるとはいえ、やはり変な奴だなとは思う。打ち身の変色が残る肌など舐めたところで一体何が楽しいのか栄にはさっぱりわからない。「そんなところ、舐めて楽しいんですか」 直接的な質問はある種の照れ...