死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 2|第20話

「ほら、甘いもの好きなんだろう」 話題をそらそうとしてラインハルトがテーブルの上にケーキの箱を置くと、ルーカスは気を取り直したように少しだけぎこちない笑顔を見せてもう一度「ありがとう」と繰り返した。 喜ぶ姿を期待していたのは確かなのに、いざ笑顔と感謝の言葉を前にするとどう反応する...
死に神の名付け親

Chapter 2|第19話

「……いや、同居人の誕生日が、そういえば少し前だったかなと思って」 ラインハルトとしては何気なく口にした言葉だったが、クララは驚いたように目を見開き感情をあらわに身を乗り出してきた。「冗談じゃないわ、何平然としてるのよ。そんなの呆れて出ていかれたって文句言えないくらいの大失態じゃ...
死に神の名付け親

Chapter 2|第18話

洗面台の蛇口をひねり、ラインハルトはそこから出てくる水が少し温んできたことに気づく。日々の慌ただしさに追われる中でも、確実に季節は変わり、春は訪れているのだ。 顔を洗い、念入りにひげを剃る。髪は三日前に金色に染めたばかりだから問題ない。鏡に映るのはうんざりするほど見飽きた自分の顔...
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Chapter 1|第17話

休日の外出から帰宅する人々でトラムは賑わっていた。ラインハルトとルーカスも、アパートメント最寄りの停留所で降車したときに人の波に流されてしまう。 ルーカスは、ラインハルトに置いていかれたと思ったのかもしれない。金色の頭は水に浮かぶくらげのように大人の広い肩や背中の間を漂い、ふいに...
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Chapter 1|第16話

話はとんとん拍子に進んだ。ルーカスの学校にほど近い場所で暮らしている教会つながりの知人に預ける、というのは施設送りよりはよっぽど良識的で罪悪感を抱かずにすむストーリーなのだろう。少なくともここに集う人々にとっては。 少し前までの重苦しい空気が嘘のように人々は愛想よく笑い、饒舌にし...