死に神の名付け親

死に神の名付け親

Chapter 4|第60話

男に声をかけられた瞬間、ラインハルトはその場から逃げ出したくなった。あの客引きの女を無理やりにでも振り切って逃げなかったことを心の底から後悔した。 確かに目の前の男にはなんとなく見覚えがあった。それこそ目の前にある素描に描かれている人物と一緒にいるところに何度か出くわした。人の姿...
死に神の名付け親

Chapter 4|第59話

出かけようとアパートを出たところで大家から声をかけられたのはしばらく経ってからのことだった。「そういえば昨日、誰かがおたくの部屋の様子を伺ってたみたいだよ」 無職の生活が続いていることが後ろめたくて顔を合わせたくないにも関わらず、ここのところ大家とはよく出くわす。もちろん不思議で...
死に神の名付け親

Chapter 3|第58話

「ごめん。本当に、ごめん……」 繰り返される謝罪の言葉が弱々しく小さくなり、嚙み殺すような嗚咽がしばらく部屋に響いていた。 なぜルーカスは謝るのだろう。口付けられても触れられてもなんの反応も示さずに、残酷な言葉だけを口にする相手にどうして謝ることができるのだろう。本当ならば謝るの...
死に神の名付け親

Chapter 3|第57話

「ラインハルト、なんでだよ」 耳元で囁いてくる声色には悲壮感すら漂った。そして、指摘されてはじめて自分の体の状態に気づいたラインハルトもまた、得体の知れない不安のようなものに襲われる。 あの晩から自分がルーカスに性的なものを感じていたのは確かなことだ。そして昨晩のラインハルトは半...
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Chapter 3|第56話

ルーカスが手を振り上げると、そこから飛び出した小さなかけらが太陽の光を受けて一瞬キラリと光ったような気がした。スローモーションのようにゆっくりに見えたけれど、何もかもきっと実際は一瞬のことだった。そして、ラインハルトの初恋の証である十字架のネックレスは窓の外へと消えていった。 窓...